スポーツ
多民族国家のASEAN諸国には、日本であまり知られていない伝統競技やスポーツが数多くあります。子どもたちが身近に楽しむものから、プロリーグが開催されるものまで、その種類も様々です。中には日本人のプロ選手がいるスポーツも存在します。
以下では、そんなASEAN諸国のスポーツのやり方をご紹介します。実際に挑戦してみましょう!
sepak takraw
セパタクロー
セパタクローは、東南アジア発祥のスポーツで、「空中の格闘技」とも呼ばれている、足を使った球技です。「セパタクロー」の名前は、マレー語の「セパ」(蹴るという意味)と、タイ語の「タクロー」(ボールという意味)を組み合わせてできた言葉です。
セパタクローのルール
バレーボールの足バージョン
3人で1チームとなり、ネットをはさんだ2チームで勝敗を競い合います。ルールはバレーボールによく似ていて、3回以内のタッチで相手コートに返すのが基本ですが、大きな違いは次の3点です。
- 手や腕でボールに触れてはいけない
- 1人で連続3回ボールにタッチするのもOK
- 守備位置のローテーションはない
セパタクローのゲーム
手で投げるトスからサーブ、
そしてアタック!
バドミントンと同じ広さのコートと同じ高さのネットを使用します。ゲームは、クォーターサークルにいる選手がセンターサークルにいるサーバーにボールを手で投げてトスし、その球を蹴って相手コートにいれるサーブから始まります。ボールが自分のコートにきたら3回以内でボールをリフトして相手のコートに返します。
セパタクローの技
セパタクローの魅力は、
多彩なテクニックの数々
サーブ
足の内側でキックするインサイドサーブ、足の甲でキックするインステップサーブ、さらには足の裏を使ったフェイントなど、大きく3種類のサーブがあります。その他にも、ボールに縦の回転を加えたドライブサーブ、横の回転を加えたサーブなど、細かく分けると数え切れないほどの種類があります。
シザース(ハサミ)と名付けられた通り、足をハサミのように使ったアタックのこと。横目で相手コートを見ながらアタックを放つことができ、抜群の得点力のある技です!
ローリングアタック
その名の通り、全身をローリング(回転)させて放つアタック。その球速は140kmにも達するセパタクローの華とも言える技のひとつです。破壊力、パワー、高さ、スピードのいずれも超強力な一方で、ブロックにかかりやすいという弱点もあります。
足もしくは背中で相手のアタックを防ぐ、守備の要となる重要な技術。完全に止めることがすべてではなく、勢いを殺して味方が拾いやすくしたり、アタックのコースを限定したりなど、レシーブしやすくすることも狙っています。
Let’s Watch
セパタクローのアクロバティックなプレイを、実際に見てみましょう!
chinlone
チンロン
チンロンで最も多く使う体の部位は、インサイド、足の裏、つま先の3箇所です。右足利きの人であれば、自分の身体の左に飛んできたボールを右足の裏で蹴ることになります。身体の前面に飛んできたボールは、インサイドでとり、少し手前に落ちるボールはつま先で拾うことになります。このことを意識しながら、ボールを蹴ってみましょう!
チンロンの技
チンロンの得点試合で使われる技はおおよそ30種類あり、10種類ずつ3つのグループに分かれています。また、このグループに属さない現代的なチンロンの技も数多く存在しており、その総数は200種類以上もあると言われています。
ここでは、その中から代表的な技10手をご紹介します。
チンロンの技・4つのグループチンジー
背面に落ちるボールを見ないで蹴る技
チンジーに属する
代表的な技
インレーパナゥ
難易度5段階中4
背面に落ちてきたボールを踵で蹴る
マハドゥ
難易度5段階中4
背面に落ちてきたボールを膝で蹴り上げる
マハニョン
難易度5段階中4
背面に落ちてきたボールをつま先で蹴る
ワイジー
難易度5段階中4
正面に飛んできたボールに対して、ジャンプしてボールの上を左足が通過したところで、右足のインサイドでボールを蹴り上げる。蹴った後の身体は一回転しながら座った状態で着地して正面を向く。
チンラ
正面、あるいは利き足と逆側に飛んできたボールを蹴る技
チンラに属する
代表的な技
ピーラーパナゥ
難易度5段階中3
肩口から入ってきたボールを、少しだけ身体を斜めにしながら踵で蹴る
レッユェゼン
試合において最も多く使われる技
レッユェゼンに属する
代表的な技
マンダラー
難易度5段階中3
飛んできたボールを膝でキャッチし、その浮いたボールの周りを反対の足で一周させた後につま先で蹴る
シャドゥ
難易度5段階中4
足をクロスさせて下にある方の膝でボールを蹴り上げる
レウェチェークイン
難易度5段階中5
自分の前に飛んできたボールに対して、手を付きながら身体を一回転させたところで、インサイドでボールを蹴り上げる
レウェパナゥ
難易度5段階中5
(右足で蹴る場合)正面に飛んできたボールに対して、身体を斜めに横にして反時計回りに右足を軸に回転し、ボールが落ちてきたところを左足でまたいで右足の踵でボールを蹴り上げる
ケッサン
現代的なチンロンの技。
得点試合で使われることはほとんどありません。
ケッサンに属する
代表的な技
ナンジンサロェ
難易度5段階中5
少し手前に上がったボールに対して、走り込んでジャンプし、自分の後方に落ちてきたボールをアウトサイドで当て、反対の足のアウトサイドでもう一度蹴り上げる。ジャンプしている間にチンロンを二度蹴り上げる、高難易度の技
けり方いろいろ
初心者が練習を始める時、つま先でのリフティングの回数を上達過程のバロメーターとして見ます。ダビンタイン(一人でおこなうチンロンの曲芸)を目指す選手(一般的に女性)は10,000回を一つの条件にしています。チンロン選手を目指すなら、1,000回以上が一つの基準になっています。ボールコントロールができるようになるには、100回以上リフティングできることが一つの目安です。
つま先での蹴り方にはいくつかの種類があります。代表的な蹴り方を2つご紹介しましょう。
- カッチェービャー(蹴るつま先)
膝を支点にしてつま先を前後に動かします。前に動いたところでチンロンを足の親指と人差し指の付け根付近で蹴ります。ボールは自分の手前に向かって回転します。この蹴り方は非常に重要で、つま先を使った技を習得する場合には、この蹴り方が基礎になります。
- タチェービャー(置くつま先)
チンロンが回転しないように下から持ち上げるような蹴り方です。この方法を使うとリフティングの回数を増やすことができます。
チンロン選手を目指すのなら、左右で同じ技ができなければいけません。得点試合では、決められた技を左右の足で連続して蹴ることで1点となるため、どちらの足でも同じ技ができることが必須です。左右平等に鍛える必要があるところも、チンロンが健康に良いとされている理由のひとつかもしれません。
チンロンの練習で最も重要なのが型練習です。チンロンは、ただボールを蹴ることが目的ではなく、決められた美しいスタイルで蹴ることが求められます。そこで、ボールを蹴る前にまず型練習をして、その動きを身体に覚えさせます。ある程度型が身についたところで、ボールを使った練習に入ります。昔のミャンマーでは、はじめの1年くらいはボールを使わずに、型練習のみで練習を重ねることもあったようです。
Let’s Watch
チンロンの華麗な足技を、実際に見てみましょう!