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スポーツ チンロン(Chinlone)

ミャンマーの国技
華麗なる足技競技

チンロンは、1500年もの歴史を持つ、ミャンマーの伝統スポーツのひとつです。「チン」は篭を、「ロン」は丸いものを意味します。巧みな足技で、つま先、膝、インサイド、アウトサイド、踵、足の裏の6か所を使って、器用に地面にボールを落とさずに蹴り続けます。

6人のプレイヤーが円になり、いかに美しいフォームで難易度の高い技を成功させるかで競い合い、アクロバティックな技が次々に繰り広げられます。ミャンマーの伝統的な舞踊の美しさをとりいれた技は、200種類以上あるとも言われており、エンターテインメント性と芸術性を兼ね揃えたスポーツです。

チンロンの歴史

チンロンは、ミャンマーを代表する伝統競技ですが、似たような競技が東南アジア地域の至るところに存在し、それぞれの形や名称で行われていたと言われています。(現在でも目にすることができます)

チンロンは、全身をバランスよくつかうことから、疲労回復のための運動として、ミャンマーでは古くから親しまれてきました。

やがてパゴダ(仏塔)近くの石畳の上に、チンワイン(チンロンを行う場所)ができ、僧侶を含むチンロン好きな人々が集まるようになりました。

今では、ミャンマーの伝統スポーツとしてや、パゴダの祭りの場で行われるパフォーマンスとして、そして子どもからお年寄りまでが慣れ親しんでいる遊びとして、ミャンマーの至るところでチンロンを楽しむ光景が見られます。ミャンマーの人々は、この、美しさを追求する芸術的なスポーツ、チンロンをこよなく愛しています。

チンロンとお祭り

仏教の祭りのパフォーマンス
としても大人気

仏教国であるミャンマーでは、パゴダの祭りの場でもチンロンが披露されます。パゴダで披露されるチンロンの大会を「チンポエ」と言います。「チン」はチンロン、「ポエ」は祭りを表しています。

ミャンマーで最も有名なチンポエは、「ワーゾチンポエ」です。「ワーゾ」とはミャンマー暦の4月のことで(日本ではだいたい7月頃)ミャンマー仏教徒にとっては宗教的に重要な月とされています。

多くのチームが参加し、選手6人が円陣を組んで、パフォーマンスを繰り広げます。選手たちのプレイに合わせてサインワインと呼ばれる楽団による、チンロンの音楽の生演奏がおこなわれます。

「ワーゾチンポエ」は、ミャンマー中部のマンダレーにあるマハムニ・パゴダ(通称ペヤジー)で行われ、45日間連続して開催されます。

毎日、朝9時から夜の12時まで休むことなく、1チーム30分の持ち時間でチンロンのパフォーマンスが繰り広げられます。この大会で最も盛り上がるのが、ワーゾの満月の日(ワーゾラビ)です。

ミャンマーでは満月の日は休日なので、たくさんの観客がやってきます。特に夕方から夜にかけては、全国から集まってきた有名選手たちが、入れ替わり立ち替わり登場し、フィナーレでは、有名選手たちによるチームが結成されて最高のパフォーマンスを披露して観客を楽しませます。ワーゾチンポエはワーゾラビの翌日が最終日となっており、この日には、マハムニ・パゴダへの寄進がおこなわれます。

パゴダの祭りでおこなわれるチンロンは、僧侶やお参りに来た人々に見せてもてなすとともに、チンロンそのものをパゴダに捧げるという意味もあるのです。

チンロンのボール

自分で育てて
自分のチンロンに

チンロンで使用する籐で編まれたボールのこともまたチンロンと呼ばれます。チンロンのボールは自分で育てるもの。雨で濡れたら日干しして、大切に手入れをしながら使いこんでいきます。蹴った時に、編まれた籐から鳴る「シャン」という音も、チンロンの味わい深い特徴のひとつです。

ボールをゆでる?

店頭で売られているチンロンは、完成品であるため、ペインティングでくっついている籐の束をくずしてバラバラにするだけで、すぐに蹴ることができます。

ところが、チンロンを作っている人たちから直接買う場合には、蹴る前に準備が必要です。編まれたばかりのチンロンは生木のままなので、一度「ゆでる」必要があります。沸騰したお湯の中に30分くらい入れることで籐の堅さがとれて足になじむようになります。よく乾燥させた後、白色でペインティングします。白色に塗るのは、観客からチンロンが見やすくなるのと、防腐剤としての効果もあると言われています。

ボールは本数にこだわる!

チンロンのボールは5本の皮籐(籐を表皮の側から挽いたもの)を使って編んでいきます。ボール状になったときに、その皮籐が何周しているのかで、例えば8本は「シッピン」、9本は「コーピン」などと呼んでチンロンボールを区別します。チンロン選手たちが好んで使うのは、8本が多いですが、まれに10本で作られた芸術的なチンロンもあります。

本数が多いということは、それだけ1本の皮籐が細くて長いということなので、材料そのものも手に入りにくいです。本数が多くなると、弾力性がでて、足にかかる負担も小さくなります。しかし、その分、壊れやすいという難点もあります。逆に、4本、5本でできたチンロンもあり、使い込んでいくと非常に良い音が出る上、長持ちし、10年以上使い続けることができるそうです。

チンダマー

プレイヤーはみんな
「チンダマー」

チンロンのプレイヤーのことを「チンダマー」と呼びます。そして、チンロンを蹴っているときに真ん中に入って集中的にパフォーマンスを行う人のことを「メンダー」と言います。「メンダー」は男優という意味で、まさに円陣の中でチンロンの主役を演じるわけです。

最近では、女性のチンロン選手も多くなってきています。お祭りなどでチンロンに出場する女性の選手は、基本的に円陣の中央でプレイします。

というのも、多くの女性選手は、もともとはダビンタイン(一人でおこなうチンロンの曲芸)のプレイヤーです。特につま先を使った蹴りはとても安定しています。ただ、チンロンの技術は練習しなければ身につかないので、彼女たちもワインチン(*)をしながら、少しずつチンロンの技のバリエーションを増やせるよう一生懸命練習します。

(*)ワインチン
円陣を組んでチンロンをすること。「ワイン」は円陣を、「チン」はチンロンを意味しています。