ASEANの絶景

ASEAN地域には世界遺産に登録された数々の文化財や自然があります。
ここではその37カ所(2015年11月現在)の中から代表的な9カ所を紹介します。

世界遺産とは

世界遺産マップ

国連専門機関UNESCO の総会で1972 年に採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)をもとに登録された文化・自然遺産のことで、遺跡や景観、自然など、人類として共有すべき普遍的な価値をもつものを対象としています。日本でも最近では富士山や富岡製糸場と絹産業遺産群が新たに登録され、話題となりました。

※図中の番号を押すと説明箇所に移動します。

①インドネシア:ボロブドゥール寺院遺跡群


9層からなる建物の構造に仏教の世界観を感じとる

ボロブドゥール遺跡

ボロブドゥール寺院遺跡群はジャワ島中央部にある世界最大の仏教遺跡です。8世紀に造られたこと以外、誰がどのような目的で建てたかは謎のまま、神秘のベールに包まれています。ピラミッド状の遺跡は、高さ23cmほどの安山岩のブロックを、接着剤などを使わずに何万個も積んで造られています。一辺120mからなる基礎部分をふくめて9層の壇が重なり、下の層は建物をぐるりと囲む長い廊下からなっています。

壁面には緻密な細工のレリーフ2,500面が並び、仏教にまつわる物語が描かれています。この長い廊下をたどって頂上に至ると、72のストゥーパ(写真の釣り鐘状のもの)が整然と並び、中には仏像が安置されています。建物全体で仏教の世界観を示し、回廊を上るごとに心が清められていくという造りになっています。

②タイ:古代都市スコータイと周辺の古都


タイの仏教文化の源にふれる王宮や寺院跡

スコータイ歴史公園 ワット・マハタート

バンコクから北に450km離れた場所に位置するスコータイ。スコータイは「幸福の夜明け」を意味する言葉で、13世紀半ば、クメール人に代わりタイ民族が初めて国を統一した王朝の遺跡です。城壁に囲まれた都の跡とその周辺には、多くの王宮跡や仏教寺院跡が立ち並んでいます。とくに城壁内の中央にある寺院ワット・マハタートが有名で、先端にハスのつぼみをつけたタイ独自の仏塔がこの寺院の象徴です。巨大な柱のみ残る本堂には美しい仏像が鎮座しています。

③カンボジア:アンコール遺跡群


クメール人が美しく壮大に描いた神々の世界

アンコール・ワット

カンボジアの北西部、密林の奥深く、トンレサップ湖畔に壮大な姿でたたずんでいるのがアンコール遺跡群です。9~15世紀にかけて、クメール人のアンコール王朝により建てられた宗教建築で、約400km2にわたり大小700もの寺院や祠、池や橋などが広がっています。規模の大きさ、調和のとれた美しさでもっとも有名なアンコール・ワットは、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神がまつられ、神々と交信する場所として建てられました。そのほか高さ8mの城壁に周囲12kmを囲まれた巨大な都市跡、アンコール・トム、女神のレリーフが見事なバンテアイ・スレイなどが神々の世界へといざなってくれます。

④ベトナム:ハロン湾


数千もの奇抜な姿の島や岩が幻想的な風景を織りなす

ハロン湾

ベトナム北部、中国との国境近くにあるハロン湾。ハロンとは「竜が舞い降りた場所」という意味で、その名の通り幻想的で迫力ある風景が広がっています。広さ1,500km2以上ある湾内には、南国の強い雨にさらされ、長い年月をかけて奇妙な形になった大小の島々が1,600以上もあり、さまざまな奇岩が海から突き出ています。この風景が中国の桂林に似ていることから「海の桂林」とも呼ばれています。地元の人々は、「闘鶏岩」のように、不思議な形をした島や岩に親しみを込めた愛称をつけています。

⑤フィリピン:コルディレラの棚田群


山岳の斜面に輝く「天国への階段」と呼ばれる棚田

コルディレラの棚田群

コルディレラの棚田群はルソン島の北部、バナウエという町周辺にあるコルディレラ山脈の斜面に築かれた階段状の水田です。これは山岳民族イフガオ族が造ったもので、2千年もの間、神聖な伝統や数々の知恵とともに受け継がれてきました。総面積約は2万ha。すべての棚田のあぜをつなぎ合わせると2万km、地球半周以上の長さになるといわれています。その美しい風景は、人間の暮らしと自然の調和から生まれ、「天国への階段」と呼ばれています。

⑥マレーシア:キナバル国立公園


マレーシアの最高峰キナバル山のふもとに広がる貴重な自然

キナバル山/写真提供:サバ州政府観光局

ボルネオ島北部にあるマレーシアで最も高い山、キナバル山(4,095m)とそのふもと一帯がキナバル国立公園です。低地の熱帯雨林地域から亜寒帯まで、標高に応じて多様な植物が生息しています。ランやウツボカズラ、世界最大の花をつける寄生植物ラフレシアに出会えるかもしれません。公園本部周辺には数種類のトレッキングコースが用意されていて、気軽に楽しむことができます。

⑦ラオス:ワット・プーとチャンパサック文化圏内の関連遺跡


山に抱かれ、ヒンドゥー教の神がすまう寺院

ワット・プー

ラオスの南部、タイとカンボジアの国境付近のチャンパサック県にあるワット・プーは、クメール人によって建てられたヒンドゥー教寺院です。「ワット」は寺、「プー」は山を意味し、その名のとおり緑深いプーカオ山のふもとから中腹にかけて築かれ、山頂がとがっているプーカオ山を古代ヒンドゥー教本尊と崇めていました。クメール建築の最高峰であるアンコール・ワットと共通する建築様式とみなされています。

⑧ミャンマー:ピュー時代の古都群


2014年に登録されたミャンマーで初めての世界遺産

シュリクシュトラの遺跡 ベベ・ストゥーパ

ピュー王国時代の古都群は、エーヤワディ川流域の乾燥地帯にある広大なかんがい地域にあり、レンガ造りで、壁と堀に囲まれたハリン、ベイタノー、そしてシュリクシュトラの3都市を含みます。これらの遺跡群は、紀元前200年から西暦900年の間、1000年以上も栄えたピュー王国を反映するものです。発掘された遺跡の中には、城塞、墓地、初期の工業生産跡や、レンガ造りのストゥーパ、今もまだ部分的に残っている城壁も見られます。そして現在も一部使用されている水道システムもあり、当時の綿密に構築された農業体制がうかがえます。

⑨シンガポール:シンガポール植物園


近代産業の発展に貢献した大都会のオアシス

シンガポール植物園(シンガポール・ボタニック・ガーデン)

シンガポール植物園はシンガポールの中心に位置し、1859年の開園以降、同国の科学、研究、植物保全などの活動に重要な役割を担ってきました。特に同園で1800年代後半から始められたゴムの研究は、東南アジアにゴム市場の一大拠点を築き、同じく同園で改良されたランは、シンガポールの重要な輸出品となりました。現在では市民の憩いの場として、またシンガポール随一の観光名所として親しまれています。植民地時代から国の発展を支えた施設としてその価値が認められ、2015年にはシンガポールでは初めて、UNESCOの世界遺産に登録されました。

ASEAN諸国の無形文化遺産

遺跡・建造物・景観・自然などの有形の世界遺産と同様に、ASEAN諸国にはUNESCOによって登録・保護された、慣習や儀式、技術、知識など、無形の文化を対象とする無形文化遺産が数多くあります。その中にはカンボジアのスバエク・トム(クメールの影絵劇)、インドネシアのバティック(ろうけつ染め)、マレーシアのマヨン(マレー半島東海岸の伝統舞踊劇)、フィリピンのイフガオ族の歌ハドハド、ベトナムの宮廷音楽ニャ・ニャック等が含まれ、いまもその伝統が受け継がれています。

インドネシアのバティック
カンボジアの影絵劇